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英語世間話、これ英語でどう言うの?

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「原爆投下から70年」英語で

2015年07月30日

  広島と長崎に原爆が投下されて、今年で70年になる。

 

日本語発想だと「投下」はdroppingだから「原爆投下」は、dropping of an atomic bombということになる。なんとなくぎこちなく、和製英語のように見えるが、the dropping of an Atomic Bomb on Hiroshimaなどとアメリカの政府関係の文書で使われているのを確認している。

 

 爆弾は「落す」とか「投下する」と表現するのが日本語だが、英語では「爆弾」のbombを動詞にして「爆弾を爆発させる」という言い方もする。「原爆」はatomic bombだから、atomic bombing、つまり「原爆を爆発させること」と使われ、「原爆投下」にあたる。広島や長崎の原爆投下の新聞記事でも、米政府文書でも、atomic bombing of Hiroshimaとか atomic bombing of Nagasaki表現されているのをよく目にする。

 

ほかにもatomic bomb attack(原子爆弾攻撃)やatomic bomb blast(原子爆弾爆発)、 簡潔に表現したatomic attack(原子攻撃)も日本語で「原爆投下」と表現する文脈で使われている。

 

 というわけで、 「日本は広島・長崎原爆投下の70周年を今年、迎える」は、「日本」を主語して表現するとこうなる。

 

 

  Japan marks the 70th anniversary of atomic bombings of Hiroshima and Nagasaki this year.

 

   Japan marks the 70th anniversary of the dropping of atomic bombs on Hiroshima and Nagasaki this year.

 

 

あるいは、こうも言える。

 

  Japan marks the 70th anniversary of Hiroshima and Ngasaki bombings this year.

 

 

Hiroshima bombing(広島への爆撃)と言えば、言わずもがなで「広島への原爆投下」ということになっている。Nagasaki bombingも同じで、この言い方がアメリカではよくされる。Atomicが省略されるのは、単なる便宜的簡略化であろうが、ひょっとしたらアメリカ人の心の奥に罪悪感もあるからでは、と勝手な憶測をしている。

 

 「広島と長崎」を主語にして言うこともできる。

 

 

   Hiroshima and Nagasaki mark the 70th anniversary of atomic bombings this year.

 

 

 私たち日本人が好む言い方で、「広島・長崎の原爆投下から70年の歳月が流れたた」を英語的にも表現できる。

 

 

   Seventy years have passed since atomic bombs were dropped onto the cities of Hiroshima and Nagasaki.

 

 

 ここは、原爆を主語にして受け身で表現し、行為の主体を隠している。原爆を投下したのは米国だということをはっきりさせておく言い方もある。

 

 

   Seventy years have passed since U.S. military planes dropped atomic bombs on the cities of Hiroshima and Ngasaki, Japan.

 

 

「原爆が第二次世界大戦を終わらせた」という原爆投下正当化の理屈は米国民の間に定着している。だから、次のような表現をよく目にする。これは10年前の原爆忌60周年のときのアメリカ政府系のVoice of America の報道の一部だ。

 

 

 Nagasaki has marked the 60th anniversary of the atomic bomb blast that brought an end to World War II. (Voice of America News 8/9/2005)

  第二次世界大戦を終結させた原爆投下の60周年を長崎は迎えた。

 

アメリカの人たちと話をすると、ほとんどの人がこれを持ち出すので、日本人としては、原爆投下は市民への無差別攻撃だったことをはっきりと主張しておくのがよい。

 

  The world's first nuclear attack - which was followed 3 days later by another on the city of Nagasaki -- killed over 100,000 civilians.

  世界最初の核攻撃(3日後に別の都市長崎にもおこなわれた)は10万人以上の民間人を殺害した。

 

実はこれは、2009年10月にニューヨークで開催されたWorld Peace Dayを伝えるVoice of America の報道の言い回しだ。原爆で殺害されたのは非戦闘員であることをちゃんと書いている。原爆による死者数の確定はむずかしが、原爆直後の死亡者数は広島で約78,000人、長崎で約24,000人、二つの都市でおおよそ10万人がその日亡くなったとされている。

 

 それでも、アメリカは原爆が戦争を終わらしたということを言っておきたいという衝動にかられるらしく、このVOA記者は、次のように付け加えている。

 

 

  The world's first nuclear attack - which was followed 3 days later by another on the city of Nagasaki -- killed over 100,000 civilians, and helped bring an end to the U.S.-Japanese war.  ("New Yorkers Mark 60th Anniversary of Atomic Bomb with Universal Peace Day," Voice of America News 10/28/2009)

 世界最初の核攻撃(3日後に別の都市長崎にもおこなわれた)は10万人以上の民間人を殺害し、日米戦争の終結に寄与した。

 

 「たしかに市民を殺害したが、これで戦争を終わらせることにつながった」という主張に対抗するには、われわれとしては、少し感情的に、killed over 100,000 civiliansの部分をkilled over 100,000 innocent (罪のない)civiliansとするのもよい。 だから、

 

「10万人以上の市民がなくなった広島・長崎の原爆投下から70年」は

 

Hiroshima and Nagasaki mark the 70th anniversary of atomic bombings, which instantly killed over 100,000 innocent civilians. It was a crime that must never be repeated.

 

 

ちなみに、最後に加えた「広島・長崎への原爆投下は繰り返してならない犯罪だ」はイランの核開発をめぐる米国との協議の担当者サイード・ジャリーリー(Saeed Jalili)氏が2009年に東京で記者会見をした時に使った言葉で、これもVOAが報道している。

 

 

 

 

(引野剛司・甲南女子大学教授 7/30/2015)

 

 

  ここで紹介した表現は、米国での複数の実用例に基づいています。その他の実用例や関連表現は実用・現代用語和英辞典(本体)www.waeijisho.net)をご覧ください。

 

 

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