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英語世間話、これ英語でどう言うの?

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ダルビッシュ有投手に向けられた差別的しぐさ、英語では

2017年11月04日

 

 

 

 

米大リーグのロサンゼルス・ドジャース対テキサス・アストルズのワールドシリーズの試合で、ユリエスキ・グリエル内野手のしぐさがダルビッシュ有投手への人種差別行為(racially charged gesture)として、全米に報道されました。グリエル選手は来季開幕から5試合の出場停止という処分となりました。

 

 先発のダルビッシュ投手から、ホームランを放ち、ベンチに戻ったグリエル内野手は、何を思ったのか、目尻を指でつり上げるしぐさをしたのです。

 

そしてスペイン語で "Chinito," (これは"little Chinese boy"(中国人小僧)という意味だとHouston Chronicle紙は書いていました)と言いました。テレビカメラがこれを捉えていました。「ちっぽけな中国人から打ってやった」という気持ちだったのでしょうか。

 

 アメリカでは「目尻のあがった目」のことをslant eyesや簡略したslantsと呼びます。特に中国人や日本人など東洋人を蔑視するときの言葉です。東洋人の目は、細長く、傾斜している(slanted)というのがアメリカ人の持つステレオタイプで、黒人に対する差別語であったniggerなどとともにかってはよく使われていました。

 

 たとえば、「彼は~を目尻のあがったやつと呼んだ」なら

 

 

 

   He called … ”slant eyes.”

 

 

 

  とか「彼は私のことを目尻の上がった人間と呼んだ」なら

 

 

 

   He called me “slants.”

 

 

 

  などと使います。

 

 ロサンゼルス・タイムズ紙は、グリエル選手のしぐさをa “slanted eyes” gestureとして次のように報じています。

 

 

 

  He returned to the Astro’s dugout, where he put his fingers to the sides of his face and lifted the corners of his eyes – a “slanted eyes” gesture widely regarded as a racist mockery of Asians. (Hailey Bransonp Potts, Andrea Castillo, Bill Shaikin, Amina Khan, “Yuli Gurriel’s offensive gesture unleashes World Series debate about racism and political correctness,” Los Angeles Times 10/29/2017)

 彼はアストロのダグアウトに戻り、そこで顔の両端に指を持っていき、眼尻を持ち上げた。 アジア人を嘲笑する人種差別的行為として広く見なされている「傾いた目」のしぐさだ。

 

 

私がアメリカで勉強していた1974-75年でも、それ以降何度も訪れたときでも、誰かがslant eyesslantという言葉を使っていたところに遭遇したことはありません。これらのことばは、現在のアメリカではnigger同様、ほとんど使われなくなっていると思っていました。

 

こうした体験から、アメリカ人の日本人に対する差別的感情などもはやないと信じていました。

 

 だから今回の騒ぎは意外でした。ましてやセリーグの横浜DNAに在籍していた選手です。アメリカでは、今も折につけ差別されている側のヒスパニックと呼ばれる中南米系でもあります。

 

日本滞在中に嫌な思いをして日本人嫌いになったのかとも思いました。それで、成績を調べてみました。入団した2014年は打率35厘でホームラン11本といい成績を残しています。翌々年、米国に亡命し、アストロズに入団しています。DNA退団時に、何かあったのかもしれません。

 

 グリエル選手の心のなかは読めませんが、ちょっとしたことで、日本人などに対する差別的行為とされていることを平気でやれる土壌がアメリカにいまだに残っているのかなと思った出来事でした。

 

 

 

(引野剛司・甲南女子大学教授 11/4/2017)

 

 

  ここで紹介した表現は、複数の実用例に基づいています。その他の実用例や関連表現は実用・現代用語和英辞典(本体)https://www.waeijisho.net)をご覧ください。

 

 

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