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英語世間話、これ英語でどう言うの?

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アメリカのスイセンのイメージはナルシズムだけではない

2018年03月20日

 

わが家の幅30センチばかりの長方形の植木鉢の中に1年間、眠っていたスイセンがようやく咲きました。このスイセンは英語ではnarcissus(ナーシサス)。ちなみに、daffodilsも一般的にスイセンをいいますが、特にラッパズイセンをさすときに使われます。

 

スイセンはギリシャ神話に登場するハンサムな若者ナルキッソス(narkissos)がその語源です。この神話からnarcissism(ナルシズム)、narcissist(ナルシスト、自己陶酔者、ウルぼれ屋)という言葉も生まれています。なので、スイセンには、いいイメージがありません。

 

スイセンをめぐるギリシャ神話がどのようなものなのか、アメリカの国立公園局(National Park Service)のウェブサイトにわかりやすく書かれていました。

 

This famous flower inspired myth is perhaps more suited to the beauty of the narcissus. Narcissus was an exceptionally handsome young man.

 

His mother had told him that he would live a long life if he did not look upon his own beauty. Narcissus decided, however, to see his reflection on the surface of the water coming from a spring.

 

  He was so enchanted by his own beauty that he remained there, still, admiring his image until he died by the side of the spring.

 

  According to another version, he mistakenly thought that his own reflection was the face of the nymph that inhabited the spring and he drowned when we jumped into the water trying to catch her. The narcissus flower supposedly grew at that spot.

("Narcissus-narcotic," Peony-Plant of Healing, National Park Service, Accessed on 3/19/2019; www.nps.gov/saga/learn/education/upload/greek%20myths-flowers.doc )

 

  この有名な花から着想された神話は、おそらく水仙の美しさにぴったりです。ナルキッソスは群を抜いてハンサムな若者でした。

 

  母親から、自分の美しさを目にしない限り、長く生きることができると言われました。しかし、ナルキッソスは、泉(spring:春)から流れ出る水面に映る自分の姿を見てみることにしました。

 

  自らの美しさに魅了され、自らの姿にほれぼれとし、亡くなるまで泉(春)のほとり立ち続けました。

 

  別のバージョン。彼は、水面に映る自分の姿を泉(春)に住む妖精だと思い違いをし、水中に飛び込んで彼女を捕まえようとし溺れてなくなりました。スイセインの花はその場所で育ったとされています。

 

 

 

 

  不幸な結末の神話とスイセンが結びついているため、スイセンを人に贈るのをためらう人もいるようです。しかし、スイセンのイメージはナルシズムだけではない、と言っている人たちがいろんな説を述べています。

 

  まずは、スイセンの花言葉は、「敬意」「上品さ」「献身」で、ナルシズムやエゴイズム(egotism)ではないという主張です。英国のビクトリア朝時代(1837―1901)に広まったとされている花言葉(language of flowers)としてこれらの言葉を挙げています。

 

 

 

  In the Victorian Language of Flowers Narcissus implied respect, decorum, and devotion. Between lovers it conveyed the message to a fortunate recipient that, "You are the only one." ("narcissus," Building Beautiful Souls,Inc.2018)

ビクトリア朝時代の花言葉では、スイセンは敬意上品さ献身を意味していました。恋人間では、「あなたが唯一の人」というメッセージを幸運な受信者に伝えていました。

 

 

  これはBuilding Beautiful Souls,Inc.というフロリダ州のゲインズ(Gainesville)にあるウェブサイトにのっていたもので、ビジネス・イメージのコンサルティングをやっている会社のようです。

 

別の説もあります。

 

 

 Daffodils, with their sunny hues, could mean unrequited love and chivalry.”

Allison Meier, “The Secret Victorian Language of Flowers,” Hyperallergic Media Inc, Brooklyn, New York. 2018)

晴れやかな色合いを持つスイセンは、片思い騎士道を意味することもあります。

 

 

  ニューヨークのHyperallergic Media Incというメディア情報関係の会社のホームページにアップされていた同社所属の記者による「ビクトリア朝の秘密の花言葉」という記事からとったものです。

 

  スイセンの専門家や愛好家の集まりである「水仙ソサエティ(The Daffodil Society)」のホームページにある「水仙の花言葉(Daffodils: The Language of Flowers)」という記事がより信頼度は高いそうです。

 

  このなかでは、スイセンと結びついた言葉として、「利己主義(Egotism)」 「うぬぼれ(Vanity)」のネガティブイメージを持つ言葉のほかに、上で述べた「敬意(Respect、Regard)」「騎士道(Chivalry)」「片思い(Unrequited love)」、さらに「不確実性(Uncertainty)」もあり、スイセンのもつイメージは多種多様であることが示唆されていました。

 

それで、スイセン学会所属の筆者は、次のようなアドバイスをしています。

 

 

One piece of advice I can give you to avoid mixing your messages. It seems to receive one daffodil implies “Misfortune” whilst several daffodils mean “Joy and Happiness.” I can think of no better reason to grow and give daffodils in plenty.

"Daffodils: The Language of Flowers," The Daffodil Society 2018; http://thedaffodilsociety.com/wordpress/miscellany/daffodilsthe-language-of-flowers/)

メッセージが混乱するのを避けるためのアドバイスがひとつあります。一本の水仙が「不運」を意味するのに対し、数本の水仙は「喜びと幸福」を意味します。スイセンはたくさん育て、たくさん贈ればいいのです。

 

専門家のアドバイスに従って、人にスイセンの花をプレゼントするときは、一本ではなく複数本にするのが無難なようです。

 

 

 

(引野剛司・甲南女子大学教授 3/20/2018)

 

 

 

スイセンにまつわるギリシャ神話をもとに描かれたナルキッソス(Detail from Echo and Narcissus by John William Waterhouse (1903) Source: Walker Art Gallery/Public Domain, Dale M. Kushner “Revisiting the Myth of Narcissus and “Healthy Narcissism” Psychology Today May25 2017)
スイセンにまつわるギリシャ神話をもとに描かれたナルキッソス(Detail from Echo and Narcissus by John William Waterhouse (1903) Source: Walker Art Gallery/Public Domain, Dale M. Kushner “Revisiting the Myth of Narcissus and “Healthy Narcissism” Psychology Today May25 2017)

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