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「桜前線」を欧米メディアはどのように英訳しているか

2018年03月23日

 

 

日本各地の桜の開花予想日を結んだ「桜前線」は、桜の国日本の特有の言葉で、英語の語彙にはありません。

 

しかし、この時期になると、東京駐在の海外メディアの特派員たちは「桜前線」という言葉も記事に織り交ぜながら、日本人と桜の関係などについて報道しています。

 

桜の開花とお天気は密接な関係があるので、気象用語の「寒冷前線」のcold front、「降雨前線」のrain frontに倣らい、「桜前線」はcherry frontと訳されて、海外に報じられているのではと想像しがちです。

 

きわめてざっくりなのですが、いくつかの英語データベスにあたってみましたところ、よく使われているのはcherry blossom frontでした。これを訳し戻せば「桜の花の前線」で、情報の受け手にはよりわかりやすく訳されています。

 

もうひとつはcherry blossom front lineです。こちらは、「桜の花の最前線」となり、やはり、読者がはっきりとイメージできるよう英訳されています。ただし、これらは日本の桜の報道で使われているだけで、アメリカの首都ワシントンの桜を伝えるWashiongton Post紙などの記事では、見当たりませんでした。

 

どのように使われているのか、いくつかの例を紹介します。まずはNew York Times。

 

 

 

From March through May, the progress of the "cherry blossom front" is reported nightly on the weather report as it makes its way north through the archipelago.YOKO TAWADA,"In Japan, Concerns Blossom," The New York Times 11/29/2009

3月から5月にかけて、列島を北上する「桜前線」の前進は毎晩、天気予報で報じられている。

 

 

 

"cherry blossom front"とコーテーションマーク付きで使われており、「いわゆる桜前線」として、造語であることを示しています。「桜前線」の移動はthe progress of the "cherry blossom front"とprogress(進行、推移)が使われています。

 

次はBoston Globe。Cherry-blossom frontとcherryとblossomをハイフンで結んでいます。「桜前線の移動」は動詞のadvanceで表現しています。

 

 

 

Every spring, the cherry-blossom front advances from south to north. (Charles A. Radin,"The scent of cherry blossoms and Japan," Boston Globe 5/3/1999)

毎年春、桜前線は南から北へ進む。

 

次は、少し長いのですが、アメリカ気象学会の会報(Bulletin of the American Meteorological Society)です。

 

 

The Japan Meteorological Agency is responsible for declaring the official opening of the season, which is an annual rite of spring and an event that has the whole country out celebrating. In anticipation, there is a very careful watching of a Somei-Yoshino cherry tree twice a day so as not to miss the five or six flowers that open to define the transition of seasons. The agency even releases maps of the cherry blossom front, which is similar to weather fronts."FORECAST: A CHERRY BLOSSOM FRONT,"  Bulletin of the American Meteorological Society Vol.89, No.6 June 2008)

 

気象庁は、季節の始まりを公式に宣言する責任を負っています。それは春の恒例の儀式のようなもので、全国民が戸外に出て祝います。予想し、季節の移り変わりを決定するため、開花しだした5つか6つの花を見逃さないように、ソイヨシノを1日2回非常に注意深く観察しています。気象庁は、気象前線に似た、桜前線の地図さえ発表しています。

 

 

日本のテレビでおなじみの「桜前線」地図は maps of the cherry blossom frontと訳されています。気象庁は桜の開花や開花予想は発表しますが、「桜前線」の地図までリリースしていないはずです。

 

これら以外にCherry blossom frontが使われていたのは、カナダではトロントのToront Star ("Five gaijins focus on Japanese life; Deck goes here," 3/11/1999),  モントリオールのThe Gazette  (" Riding a thmb with the blossms along the length of Japan“ 9/3/2005)、エドモントンのEdmonton Journal(" Japan's  cherry-blossom days marked by drunkeness, song,"  3/26/1989)。パリで発行されているInternational Herald Tribune (" For Japanese,all is quiet on 'cherry-blossom front' Spring rite offer solace from worldly woes,“ 4/8/2003)、イギリス・ロンドンのDaily Telegraph (Everything you need to know about seeing cheery blossom in Japan 3/7/2017),オーストラリア・キャンベラのThe Canberra Times(" Bugbears of blossom boozy,“ 4/23/2006)など多数ありました。

 

 

 

 

 

次はcherry blossom front lineを使った例を一つだけ。カナダのVancouver Sunの記事です。

 

 

Weather forecasts focus primarily on the "cherry blossom front line," which shows the advance of the blossom from Kyushu, in the warm south-west, to chillier Hokkaido, 1,600 kilometres north.Colin Joyce,"Blossom forecast plumb chaos: Cherry signals drunken revels; plum is family time," Vancouver Sun 4/7/2006)

  天気予報は、暖かい南西部にある九州から、1,600キロ北の寒冷の北海道までの開花の前進を示す「桜の前線」に主に焦点を当てる。

 

 

 

この記者は「桜前線」の移動はadvance (前進する)を使っています。 このほかには、イギリスのSunday Times ("Sweet fleeting glimpse of spring," 4/27/2014)cherry blossom front lineでした。

 

 

 

  ニュージーランドのクライストチャーチのThe Pressという新聞は、日本語をローマ字表記し、カッコ内にcherry blossom frontとしていました。

 

 

The weather authorities report the advance of the sakura zensen (cherry blossom front).(Anna Arlidge,"National spring pastime,"  The Press; Christchurch, New Zealand 2/6/2006)

気象当局は桜前線の動きを報告する。

 

ロンドンの有力紙The Gurdian“G2: Shortcuts: Britain is bursting into blossom," 4/26/2009)やカナダのThe Windsor Star(“Japanese make time to view the blossoms," 4/5/1993)もsakurazensen(cherry blossom front)とかsakurazensen or cherry blossom frontとしていました。

 

 

  日本語の sakuraとfront 合体させている例もありました。New York Timesの記事です。

 

The sakura "front" is already moving up the Japanese archipelago. ( STEPHANIE STROM,"WHAT'S DOING IN; Tokyo," The New York Times 3/28/1999)

桜前線はすでに、日本列島を北上している。

 

 

  ただし、Sakura frontの用例はこれ以外に見つかりませんでした。

 

  ということで、「桜前線」は”cherry blossom front”がお勧めです。

 

  とはいうものの、「桜前線」はマスコミ用語で、われわれが日々の会話やSNSなどであまり使うことはないように思います。となると、このcherry blossom frontはどう使うかというと、上であげた例のほかに、桜が咲き出したころに、

 

 

The cherry blossom front has come to Tokyo.とか

 

The cherry blossom front hits Osaka.

 

 

と情報発信をするのはどうでしょうか。

 

 

(引野剛司・甲南女子大学教授 3/23/2018)

 

 

ここで紹介した表現は、米国などでの複数の実用例に基づいています。その他の実用例や関連表現は実用・現代用語和英辞典(本体)(www.waeijisho.net)をご覧ください。

 

 

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