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英語世間話、これ英語でどう言うの?

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「紀州のドン・ファン」を英字メディアはどう表現しているのか

2018年06月17日

 

 

自らを「紀州のドン・ファン」と呼んでいた和歌山県の77歳の資産家の不審死。多彩な女性遍歴、22歳も年下の新妻、大量の覚せい剤による死亡、殺害の可能性。この人の人生には興味を掻き立てるものが満載で、その死から1か月近くが経過しても、テレビのワイドショーでまだ取り上げられています。

 

日本のマスメディアは、「紀州のドン・ファン(Don Juan)」をそのまま使っていますが、海外メディアの報道はどうか、こういう人を英語ではどう呼んでいるのでしょうか。

 

国内の英字メディアは報道しているのですが、英語圏のメディアは、いまのところ大きな興味を示しているようには見えません。ネットで見る限り、これを報じているのは新聞、雑誌ともごくわずかです。日本の意義のある社会現象として見ていないからでしょうか。

 

そのなかで、英国のThe Timesは見出しに”Japan’s Don Juan”としていました。スペインの伝説の放蕩貴族ですから、「日本のドン・ファン」だけで、英国の読者には十分に伝わるのでしょう。

 

 

 

Japan’s Don Juan, 77, poisoned after marrying third wife, 21

 (Richard Lloyd Parry,”Japan’s Don Juan, 77, poisoned after marrying third wife, 21,” THE TIMES, London 6/7/2018)

 

日本のドンファン(77歳)、21歳の三番目の妻と結婚したのち毒を盛られる

 

 

 

 

記事の書き出し(リード)部分でもthe Don Juan of Wakayamaとしたうえで、英国の読者の大半はWakayamaが何を意味するかわからないので、それが地名で、どのような場所をかがわかるように記述しています。次のパラグラフで野崎幸助さんをめぐる事件についてポイントをまとめ、最初の二つの段落を読めば、見出しのJapan’s Don Juanの意味するところわかるように書いています。

 

 

 

 

He called himself the Don Juan of Wakayama, after the quiet and unglamorous corner of rural Japan where he pursued his sexual escapades.

(Richard Lloyd Parry,”Japan’s Don Juan, 77, poisoned after marrying third wife, 21,” THE TIMES, London 6/7/2018)

彼は自らを和歌山のドン・ファンと呼んでいた、和歌山は日本の田舎の静かで地味な片隅にある場所の名で、彼はここで性的奇行を追い求めていた。

 

 

 

But now Kosuke Nozaki, 77, who wrote a bestselling memoir about his many lovers, is dead and police are investigating whether his priapic lifestyle led to his murder.

(Richard Lloyd Parry,”Japan’s Don Juan, 77, poisoned after marrying third wife, 21,” THE TIMES, London 6/7/2018)

しかし今現在、数多くの愛人についてのベストセラー回想録を書いた野崎幸助さん(77)は死亡し、警察は彼の男根崇拝のライフスタイルが殺人につながったかどうかを調べている。

 

 

 

 

かかなり露骨でセンセーショナルな言葉であるsexual escapades(性的奇行)とかhis priapic lifestyle(彼の男根崇拝ライフスタイル)を使い、「和歌山のドンファン(the Don Juan of Wakayama)」のイメージに重ねています。

 

香港の有力英字紙South China Morning Postの見出しもDon Juanを使っていましたが、womanizingという言葉を頭に持ってきていました。

 

 

 

Womanising Japanese ‘Don Juan’ dead – and police suspect murder

(Julian Ryall, “Womanising Japanese ‘Don Juan’ dead – and police suspect murder,” South China Morning Post 6/5/2018)

多くの女性と関係を持っ日本の「ドン・ファン」死亡。警察は殺人を疑う

 

 

 

このwomanising (米国式スペルはwomanizing)は日本語に訳せば「女好き」。見出しをつけた編集者がJapanese Don Juanだけでは意味が十分に伝わらないと考えたのかもしれません。

 

このwomanizingは「女好き」でいいのか、改めてイギリスのOxford Dictionaryで確認すると、

 

 

 

 

engage in numerous casual sexual affairs with women

女性と数多くのカジュアルな性的関係を持つ

 

 

 

とありました。「女性と数多くの関係を持っている」ですから「女好き」では十分に訳しきれていません。しかし、ご当人にはあてはまる言葉です。

 

記事本体の書き出し部分では、South China Morning Postは、にはDon Juanは使わずplayboyを代わりに使っています。Don Juanとplayboyは同じイメージの言葉ということでしょう。

 

 

 

Elderly playboy Kosuke Nozaki was found by his 22-year-old wife collapsed in the bedroom of their home.

 (Julian Ryall, “Womanising Japanese ‘Don Juan’ dead – and police suspect murder,” South China Morning Post 6/5/2018)

高齢のプレーボーイ野崎幸助さんは、自宅の寝室で倒れているところを22歳の妻に発見された。

 

 

 

アメリカのNewsweekのネット版もDon Juanとplayboyを併用して見出しにしています。

 

 

 

 

Mystery Death of Real Estate Mogul and Playboy Dubbed 'Don Juan' Treated as Murder in Japan

(Sofia Lotto Persio,“Mystery Death of Real Estate Mogul and Playboy Dubbed 'Don Juan' Treated as Murder in Japan,” Newsweek 6/5/2018)

日本の「ドン・ファン」と呼ばれる不動産王でプレーボーイの不審死は殺人として扱われている

 

 

 

Newsweekのこの記事の書き出しでは、野崎さんはwomanizer表現されています。「womanizeする人」「womanizingな人」です。

 

 

 

The death of a wealthy 77-year-old Japanese man and notorious womanizer is being investigated as a murder, police sources told Japanese news agency Kyodo. 

(Sofia Lotto Persio,“Mystery Death of Real Estate Mogul and Playboy Dubbed 'Don Juan' Treated as Murder in Japan,” Newsweek 6/5/2018)

日本の77歳の資産家男性で悪名高い女たらし(プレーボーイ)の死は、殺人事件として捜査されていると、警察筋が日本の通信社である共同通信に語った。

 

 

 

念のためOxford Dictionaryのwomanizerの定義を確認しました。

 

 

 

a man who engages in numerous casual sexual affairs with women

数多くの女性とカジュアルな性的関係を持つ男性

 

 

 

「紀州のドン・ファン」は、その人生で「4000人の美女」と関係を持ったと著書で書いているそうです。話半分としても、その数はかなりにのぼり、Oxford Dictionaryのwomanizerの定義にあてはまります。

 

参考までに, womanizerにはネガティブな感情が含まれているとしているCollins English Dictionaryの定義を上げておきます。

 

 

 

If you describe a man as a womanizer, you disapprove of him because he likes to have many short sexual relationships with women.

ある男性をwomanizerと表現する場合、その男性が好んで数多くの女性との短期間の性的関係を持つことを容認できない気持ちを示している。

 

 

 

日本の和英辞書ではwomanizerは「女たらし」「女癖の悪い男」「無類の女好き」「プレーボーイ」で、playboyは「プレーボーイ」と訳されています。

 

日本語の「女たらし」や「女癖の悪い」と「プレーボーイ」「女好き」では、受ける印象がかなり違います。ですから、英語メディアが使っているwomanizer、womanizingを「女たらし」や「女癖の悪い」と訳すか、単なる「プレーボーイ」「女好き」という程度に訳すかは文脈次第ということになります。

 

もう一つ、英語のplayboyと日本語の「プレーボーイ」ではユアンスが少し違います。

 

日本語で「プレーボーイ」というと、大辞林第三版に定義されているような「次々に女性を誘惑して遊ぶ好色な男」をイメージします。「しゃれた遊び男」とも定義されていますが、前者のイメージが強いという印象です。

 

英語のplayboyの定義は少し違います。アメリカのMerriam-Websterには

 

 

 

a man who lives a life devoted chiefly to the pursuit of pleasure

主に快楽(喜び)の追求で人生を生きる人

 

 

 

イギリスのCambridge Dictionaryには

 

 

 

a rich man who spends his time  and money on expensive things and a life of  pleasure

高額なものや快楽生活に時間とお金を費やすお金持ちの男性

 

 

Oxford Dictionaryには

 

 

 

A wealthy man who spends his time enjoying himself, especially one who behaves irresponsibly or has many casual sexual relationships.

自分自身を楽しむ時間を過ごす裕福な男性、とりわけ無責任な行動をしたりする男性、あるいは多くのカジュアルな性的関係を持つ男性。

 

 

 

とあります。つまり、辞書的にはplayboyは女性との関係が快楽の対象に限定されてないことになります。

 

とはいえ、playboyをグーグルで画像検索しますと、PLAYBOY誌の表紙が無数にでてきます。その表紙はグラマーな女性を売りにしていたことはよく知られているところです。世界中で読まれたPLAYBOY誌がplayboyとは「女性に快楽を求める男」のイメージの固定化に大きな役割を果たしているはずです。

 

結局のところ、その一生を多数の女性とデートすることに捧げた資産家の野崎幸助さんはイギリス流のplayboyの定義にもあてはまり、英語的にはJapan’s Don Juanであり、womanizerでありplayboyということになります。

 

余談ですが、私にとっては、womanizerは単に知識としての英語、現実感のない英語でしたが、このたびのニュースで現実社会の言葉になりました。

 

 

(引野剛司・甲南女子大学名誉教授 6/17/2018)

 

 

ここで紹介した表現は、おもに米国での複数の実用例に基づいています。その他の実用例や関連表現は実用・現代用語和英辞典(本体)(www.waeijisho.net)をご覧ください。

 

 

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