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「半端ない」をどう英語に訳すか

2018年06月24日

 

 

サッカーファンの間ではよく知られていたという「半端ない大迫」が、当人のW杯コロンビア戦での大活躍で、全国的な流行語になっています。

 

イギリスの高級紙The Gurdian(ザ・ガーディアン)がW杯の選手名鑑(Your complete guide to all 736 players at the 2018 World Cup)で大迫選手の紹介に次のようにhampanaiを書いているというので、またまた話題になっています。

 

 

 

His performances are often described as hampanai or, with extra emphasis, hampanaitte a Japanese expression meaning “awesome” or “incredible”. The term was first used in reference to Osako by a tearfully awestruck opponent after a televised high school match ten years ago, and has suddenly gained nationwide traction following his winner in the shock opening win against Columbia.

(“Your complete guide to all 736 players at the 2018 World Cup,” The Guardian 6/5/2018)

彼のパーフォーマンスは、「すごい」「信じられないぐらいすごい」という意味の日本語表現である「半端ない」、特に強調して「半端ないって」としばしば表現されている。10年前、テレビ中継された高校の試合が終了し、圧倒され涙を浮かべた相手チームの選手によって大迫を言うのに使われたのが最初で、コロンビア相手のショッキングな初戦勝利の後、突然全国的な注目を集めた。

 

 

 

このように、ガーディアン紙は「半端ない」をawesomeあるいはincredibleと訳しています。

 

このawesomeという言葉、もともとは神に「畏敬の念を起こさせる」という意味ですが、口語でHe is awesome.と言えば、「彼はすごい」になります。もう一つのincredibleは「信じがたい」という意味ですが、やはり、日本語ですばらしいという文脈でよく使われます。

 

 

ですから、ガーディアンは「半端ない」を「すごい」と意訳して、awesomeやincredibleと訳していることになります。若い人の間では「半端ない」は「すごい」という意味で使うという意見がネット上には多数ありますので、これらに基づいて訳語としたのではないかと思われます。

 

実は、awesomeにしてもincredibleにしても、サッカー選手を含め卓越したスポーツ選手や素晴らしいプレーをいうときのきわめてよく使われる形容詞です。

 

そう考えれば、サッカーという文脈のなかで日本語のhampanaiはawesomeやincredibleだと説明すれば英語圏読者には、すんなりと理解されるはずです。

 

例をひとつずつあげます。まずは、アメリカのバスケットボール選手についての一文です。

 

 

 

He's an awesome player and a great athlete. He knows how to play both sides of the basketball court, offense and defense.

Ruben D. Calderon,"Victory for team, victory for 'Dream'," Marine Corps Air Station Iwakuni, Japan, U.S. Marine Corps 2/20/2004)

彼はすごい(半端ない)選手だし、素晴らしいアスリートだ。彼は、バスケットボールコートの両面、オフェンス、ディフェンスでのプレーが分かっている。

 

 

次はアメリカのサッカーについてのボイス・オブ・アメリカの記事です。

 

 

 

 

Weiss describes Nyarko as the most incredible player he's ever coached.

Sonny Young,"Ghana’s Nyarko Ready For New Season With D.C. United," Voice of America News 3/4/2016

ワイスはニャルコを彼が今までコーチしたもっともすごい(半端ない)選手と表現している。

 

 

 

 

W杯を主催するFIFA(国際サッカー連盟)のサイトのコンテンツでもawesomeとincredibleはよくでてきます。

 

 

 

Awesome Ronaldinho goal can't stop Raja

(FIFA.com 12/1/2014)

すごい(半端ない)ロナウジーニョのゴールがあっても、ラージャを止められない

 

 

50 days to go: Brazil’s awesome attack

(“50 days to go: Brazil’s awesome attack ,”  FIFA.com 4/28/2017)

あと50日。ブラジルのすごい(半端ない)攻撃

 

 

The World Cup in Brazil had some awesome goals.

(“The World Cup in Brazil had some awesome goals, “2014 FIFA World Cup: ALL THE GOALS,” FIFA.com 11/10/2014)

ブラジルでのワールドカップではすごい(半端ない)ゴールがあった。

 

 

Ronaldo's ‘incredible, fantastic” goal

(“Ronaldo's ‘incredible, fantastic” goal,” FIFA.com 12/21/2009)

ロナウドの「見事なすごい(半端ない)」ゴール

 

 

Heydari: Queiroz coaches in an incredible way

 

(“Heydari: Queiroz coaches in an incredible way,” FIFA.com 6/16/2014)

キエロのコーチングの方法はすごい(半端ない)、とヘイダリは言う

 

 

 

 

「半端ない」とは「『半端ではない』の省略形。俗に、中途半端ではなく、徹底しているさま。程度がはなはだしいさま」とデジタル大辞泉には定義されています。

 

「半端ない選手」というのは、物事を中途半端には終わらせない選手、つまり「物事をきっちり成し遂げる選手」と考えれば、

 

 

 

player who gets things done

 

 

 

というよく使われている表現があります。これは「きっちり仕事をする選手」という意味ですが、「半端ない選手」の訳にもなり、英語圏の読者にはよく理解されます。実際のところこれの類型として、

 

 

a team player who gets things done

きっちり(半端ない)仕事をするチームプレーヤー

 

a highly effective team player who gets things done

きわめて効果的にきっちり(半端ない)仕事をするチームプレーヤー

 

a great, great player who gets things done

きっちり(半端ない)仕事をする超すばらしい選手

 

a cool player who gets things done

きっちり(半端ない)仕事をするかっこいい選手

 

 

などの実用例が多数あります。これらの表現は単にスポーツ選手をいうのではなく、企業や官庁などの逸材を言うのにも使われています。

 

念のためにアメリカのメジャーリーグ・サッカーの記事から、実用例を一つ。

 

 

 

 

“I think he sees me as a player who gets things done."

(Jack McCarthy,“Midfield talent a sudden strength,” Chicago Tribune 1/19/2013)

「彼はぼくのことを、きっちり(半端ない)仕事をするプレーヤーだと見ている、と思う」

 

 

 

「半端ない選手」を「何かを実現さす選手」と考えれば、別の慣用表現を訳語とすることもできます。

 

 

 

player who makes it happen

 

 

です。Make it happenとは「何かを起こす」「実現さす」という意味の頻用語ですが、スポーツの文脈で使われれば「チャンスを作る」とか「チャンスをものにする」と訳せます。

 

アメリカのバスケットボールの記事から、実用例を一つ。

 

 

 

 

While Eisley is the team's leading scorer, Rowland is the player who makes it happen for the Leopards.

(”BELLE VERNON HAS TALENT AND DEFENSE TO MAKE AAA RUN,” Pittsburg Post-Gazette, Pittsburg, Pennsylvania 12/14/1997)

エスリーはチーム一番のポイントゲッターだが、ローランドは、レオパードのチャンスを作る(半端ない)プレーヤーだ。

 

 

 

 

「平均をはるかに超えた」という意味で、far above averageという表現もあります。少し弱いかもしれませんが、これを「半端ない」の訳語にできます。

 

実例を一つ。これはニューヨークの州議会議員のプロファイルの一部です。

 

 

Assemblyman Andy Goodell was far above average for the number of bills approved by both houses of the state Legislature. The success rate for Assemblyman Goodell was more than 150% higher than the average Assembly member.

(“Goodell Very Successful In Number Of Bills Adopted,” Assemblyman Andy Goodel homepage 7/26/2012)

州議会の両議院で承認された法案の平均数では、アンディ・グッドエル議員は半端ではなかった。グッドエル議員の成功率は、議員平均よりも150%以上高かった。

 

 

 

「中途半端な」のオーソドックスな訳語はhalf-bakedです。もともとは料理の言葉で火が十分に通っていない「生焼け」という意味です。これを使ったa half-baked player (中途半端な選手)というフレーズもあります。実用例をあげます。

 

 

 

I don't want any half-baked player in the team.

"Pillars Want Double Next Season,"  SportsDay,Accessed on 6/24/2018)

チームには生煮えの(半端な)選手はいらない。

 

 

 

当然ながら、「~は中途半端ではない」というのにも …is not half-baked.

もあります。物事だけに限りません。人もその対象となります。実際に使われている例をあげます。オバマ前大統領の言葉で、ヒラリー・クリントン国務長官について述べたものです。

 

 

 

"Hillary Clinton is not half-baked in terms of her approach to these problems," Obama said at a news conference at the White House.

("Press Conference by the President," For Immediate Release,Office of the Press Secretary, The White House 10/2/2015)

「ヒラリー・クリントンは、こうした問題に対する彼女のアプローチでは、中途半端ではない」と、オバマはホワイトハウスの記者会見で述べた。

 

 

 

したがって、「大迫、半端ない」をOsako is not half-baked.Osako is not a half-baked playerとしても、ネイティブスピーカーにはその意味は伝わります。

しかし、half-bakedというネガティブな言葉を否定形にした言い方は、大迫選手のすごさを表現するには十分ではないので、「大迫、半端ない」のいい訳語とは思えません。

 

他にも「すばらしい選手」をいうごくごく基本的な英語としては、an outstanding playerとかan distinguished playerがあります。ですから、「大迫、半端ない」を意訳すれば、さまざまな言い方が可能だということになります。

 

 

 

(引野剛司・甲南女子大学名誉教授 6/24/2018)

 

 

ここで紹介した表現は、おもに米国での複数の実用例に基づいています。その他の実用例や関連表現は実用・現代用語和英辞典(本体)(www.waeijisho.net)をご覧ください。

 

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