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英語世間話、これ英語でどう言うの?

エッセイ一覧

「山火事」は英語ではmountain fireとは言わない

2018年11月19日

 

「山火事」という言い方は日本語の発想で、アメリカでは wildfire (野火)かwildland fire (荒野火災)、あるいはa forest fire (森林火災)と表現します。

 

 

どちらかと言うとwildfireが一般的で、今カリフォルニア州で猛威を振るっている山火事の報道でもどのマスメディアを見てもwildfireが使われています。

 

ニューヨーク・タイムズ、ワシントンポスト紙、地元のサンフランシコ・クロニクル紙やロサンゼルス・タイムズ紙、テレビのCNNなどもwildfireと言っています。イギリスのBBCもCalifornia wildfiresとして報道しています。

 

例を挙げます。

 

 

 

Death Toll Climbs, Dozens Are Missing in California Wildfires

(” Death Toll Climbs, Dozens Are Missing in California Wildfires,” New York Times 11/15/2018)

カリフォルニア山火事。死者数拡大、数十名行方不明

 

 

 

これは、New York Timesのカリフォルニア火災の記事のみだしです。ロサンゼルスに近い南カリフォルニアの山林地帯とサンフランシコに近い北部の山林の両方で大規模火災が発生しているためwildfiresを複数形になっています。

 

次は、サンフランシコ・クロニクル紙の「北カリフォルニアの山火事」の報道一部です。

 

 

Wildfire experts say the Northern California wildfire that has killed at least 56 is the deadliest in a century.

"Experts: California wildfire is deadliest in last 100 years,"  San Francisco Chronicle SFGate 11/14/2018

少なくとも死者56名を出した北カリフォルニアの山火事は今世紀でもっとも多くの死亡者を出した火災だと複数の山火事専門家は言っている。

 

 

 

 

マスメディアだけではなく、誰もが日々の会話でwilidfireを使っています。ツイッターやFacebookのメッセージやコメントをみればそれがわかります。ロサンゼルス郊外のバーバンクスに住むアメリカ人の旧友のFacebook投稿にも次のようにwildfiresが使われていました。

 

 

 

I'd like to have as a superpower the ability to form heavy rain clouds over wildfires.

(Ginny Turner, Facebook 11/16/2018)

山火事の上空に豪雨をもたらす雲を作る能力、スパーパワーが欲しい

 

 

 

もちろん、トランプ大統領もホワイトハウスも政府機関もCalifornia wildfiresです。

 

 

 

We mourn for the lives lost and we pray for the victims of the California Wildfires.

(Donald J.Trump@realDonaldTrump,Twitter 11/13/2018)

私たちは失われた命に哀悼の意を表し、カリフォルニア山火事の犠牲者のために祈ります。

 

 

 

The Department of Health and Human Services has declared the California wildfires a public health emergency.

(The White House@WhiteHouse, Twitter 11/17/2018)

保健福祉省は、カリフォルニアの山火事が公衆衛生上の緊急事態であると宣言しています。

 

 

 

トランプ大統領のツイッターにはforest fireも使われていました。毎年、大規模山火事が発生するのは、山林管理がお粗末であること以外理由がみつからないと、思いつきと思われるつぶやきで、批判を受けたツイッターです。

 

 

 

There is no reason for these massive, deadly and costly forest fires in California except that forest management is so poor.

Donald J. Trump@realDonaldTrump, Twitter 11/10/2018)

森林管理がおろそかである以外に、大規模で致命的な犠牲を出したカリフォルニアの森林火災の原因が見当たらない。

 

 

 

 

 

このように見ていくと、日本人は「山の火災」と捉えますが、アメリカ人は「原野の火災」とか「森の火災」と認識していると言えます。

 

アメリカは未開の地を開拓して発展した国です。独立以来アメリカはwildernessとかwildlandと呼ぶ「未開の地」を切り開き、次々と町をつくってきました。今日でも自然が保たれている地域はwildernessと呼んでいます。

 

ですから、山火事の捉え方としては、町以外のところでおこる火災、つまりwildfire、wildland fireと表現していると考えられます。

 

一方、日本人は、山に囲まれた里や、山が背後にある里で暮らしてきました。山と里の区別は生活のなかで培われてきたはずです。里以外のところは山ですから、そこで起こる火事は「山火事」となります。

 

というのが私個人の説です。

 

Forest fireについては、BBCの説明を引用したWikipediaの説明でその意味が分かります。

 

 

 

Depending on the type of vegetation present, a wildfire can also be classified more specifically as a brush fire, bushfire, desert fire, forest fire, grass fire, hill fire, peat fire, vegetation fire, and veld fire.

(“Wildfire,”  BBC Earth/Wikipedia,10/16/2015)

植生のタイプに応じて、山火事(原野火災)は雑木林火災、低木火災、砂漠火災、森林火災、草地火災、丘陵火災、泥炭火災、植生火災、草原火災のようにさらに具体的に分類することができます。

 

 

このように、forest fireは、大きな概念のwildfireを火災発生場所によって細分化した呼称です。

 

 

だから,アメリカの政府関係文書やマスメディアのアーカイブスを見ても、mountain fireと言う言葉は見つかりませんでした。

 

ただし、山の固有名詞を前に持ってきて「~山火災」としてCrescent Mountain Fire(クレセント山火災)とかBald Mountain Fire(ボールド山火災)という言い方がされています。

 

The Bald Mountain Fireと記載された米林野部(U.S. Forest Service)のInciWebというサイトでの一文です。

 

 

 

 

The Bald Mountain Fire started by lightning on August 24, 2018 in the Mount Nebo Wilderness just off the top of Bald Mountain.

(”Incident Overview,” U.S. Forest Service, Accessed on 11/19/2018)

 

ボールド山火災は、2018年8月24日、ボールド山頂上から少し離れたネボ山原野で落雷によって発生した。

 

 

 

これは、大規模な山火事は地名などと組み合わせて、命名されるためです。今カリフォルニア州の2か所で発生している大規模な山火事はCalifornia Wildfiresと呼ばれており、その一つカリフォルニア北部のパラダイスと呼ばれている地域の山火事はParadise Wildfireです。

 

 

「山火事」にも、日米の言語文化の違いが反映されているのがわかります。

 

 

 

(引野剛司・甲南女子大学名誉教授 11/19/2018)

 

 

ここで紹介した表現は、複数の実用例に基づいています。その他の実用例や関連表現は実用・現代用語和英辞典(本体)(www.waeijisho.net)をご覧ください。

 

 

 

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