時事語、話題語、ビジネス・暮らしのことば、日常語に対応する今アメリカなどで使われている英語がみつかります
2009年10月17日
国の舵取り役に新しく就任した鳩山首相、任命された大臣たちの言葉は平易で、奥歯にものがつまったような言い方をしないのが気持ちがいい。その率直な言葉の端々から、ストレートに意気込みが伝わってくる。
自分の言葉で語る大臣の姿にも好感が持てる。今までの政権とは違い、その選挙公約が本当に国民との契約だという意識を強く持っているのも言葉の端々から感じられる。こうした国のリーダーたちの言葉遣いから政権交代をまず実感した。
さて、首相でも大臣でも「その職に就任する」のをtake officeという。
政治家などが公職に就くという記事を書くときに、英語圏の記者たちの頭に浮かぶのがたぶんこのtake officeという表現だ。
じつは、officeには日本語化した「オフィース」にはない意味がある。
大統領や総理大臣、知事など「行政や立法の要職」という意味だが案外、知られていない。
だからtake officeとなると「行政の要職に就く」となる。「去る」という意味のleaveと組み合わされleave officeとなると「辞職する」になる。
世界中で、官職に新たに就いたり、辞任したりのニュースは溢れかえっている。そのたびにtake officeとleave officeが使われる。
ニュースの英語ではやさしく表現することを好む。ニュースがこむずかしい言葉で書かれていれば、読んではもらえないからだ。
だから、アメリカの大学のSchool of Journalism(ジャーナリズム学部)などのジャーナリスト志望の学生は、簡潔に平易に書くということを学ぶ。これをplain Englishで書くという。take officeもplain Englishのひとつだから、記者たちは好んで使う。
「公職に就任する」という意味をもつのはtake officeだけではなく、ほかにもさまざまな言い方がある。
assume officeやenter office、come into office, assume one’s post,
も、よく使われている。
なぜかというと、英語の文章では同じ言葉を繰り返し使うのを極度に嫌う。同じ意味のことを言わないといけない場合は、別の言葉を使う。「同じ語を繰り返し使うのは避けよ」と、アメリカ人は文章技術として学校で教わる。だからアメリカ人記者は机に類語辞典を必ず手元に置いて、使う語にバラエティを持たせるようにする。
ニュースを読むときに、こうした記者の文章テクニックを楽しむのもおもしろい。
(初出 Mainichi Weekly 10/27/2009 ひきの・たけし)