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英米メディアは麻生財務相ヒトラー発言をどう翻訳し、報道したか

2017年09月01日

 

「何百万人を殺したヒトラーはいくら動機が正しくても駄目だ」という麻生太郎副総理兼財務相の言葉を英米メディアも見逃さなかった。ヒトラーに対する激しい人道的怒りが共有されている主要英米メディアにとってはきわめてあたりまえのリアクションだ。

 

  イギリスのザ・ガーディアン(The Guardian)はジャスティン・マカリー(Justin McCurry)東京特派員の記事を830日付けで報じている。 その見出しは 

 

 

 Japanese minister Taro Aso praises Hitler, saying he had ‘right motives’ (日本の大臣麻生太郎、ヒトラーを賞賛。ヒトラーの「動機は正しかった」と述べる)

 

 

麻生財務相は発言を撤回し、「(発言した自民党麻生派研修会で)ヒトラーをほめたように聞こえた人はいない」と反論したが、ガーディアン紙は発言は、ヒトラーを賞賛したものであると、捉えて、報道している。ガーディアンは、センセーショナルを売り物にする大衆紙ではなく、良質なメディアである高級紙(quality paper)の一つで、その論調はリベラルだとされている。この記事は、

 

 

 Finance minister forced to retract comment after criticism that he appeared to be defending Hitler’s motives for the genocide of millions of Jews. (財務大臣は、何百万人ものユダヤ人の大量虐殺のヒトラーの動機を擁護しているようだとの批判を受けて、財務大臣はコメントの撤回を余儀なくされた。)Justin McCurry ,Japanese minister Taro Aso praises Hitler, saying he had 'right motives' The Guardian, London, August 30, 2017

 

 

 

という書き出し(lead)ではじまり、ヒトラーには正しい意図があったというナチス賞賛発言だと、かなり断定的に書いている。

 

 

Japan’s finance minister, Taro Aso, has courted fresh controversy after expressing admiration for the Nazis, describing Adolf Hitler as “having the right motives”.(日本の麻生太郎財務相は、ナチス賞賛を表明し、アドルフ・ヒトラーを「正しい動機を持っていた」と述べ、新たな物議を引き起こした。) Justin McCurry ,Japanese minister Taro Aso praises Hitler, saying he had 'right motives' The Guardian, London, August 30, 2017

 

 

 

 

 

記事は、日本語に近い英語で報道すべきだと考えたのか時事通信の英文ニュースを一部引用して、問題部分を次のように報道している。

 

 

 “Hitler, who killed millions of people, was no good even if his motive was right,” Aso told a meeting of his faction of the governing Liberal Democratic party, according to Jiji Press. (時事通信によると、「麻生氏は与党自民党の自分の派閥会合で、「何百万人もの人を殺害したヒトラーは、たとえ彼の動機が正しかったとしても、よくはなかった」と述べた。) Justin McCurry ,Japanese minister Taro Aso praises Hitler, saying he had 'right motives' The Guardian, London, August 30, 2017

 

 

 

麻生発言はアメリカのAP通信、イギリスのReuter(ロイター通信)によっても世界に発信され、多くの新聞がこれを掲載している。

 

イギリスの高級紙「インデペンデント(Independent)」やアメリカの「ニューヨーク・タイムズ」や「ワシントンポスト」がこれらの通信社の記事を使っている。

 

 

ニューヨークタイムズ(インターネット版)は、まずロイター電を使い、更新記事ではAP電を使っている。ロイター電は、麻生氏の言葉は「大量虐殺のヒトラーの動機の擁護と解釈される発言」という若干、抑制を効かせた捉え方はしている。

 

Japanese Deputy Prime Minister Taro Aso on Wednesday retracted a remark to lawmakers of his faction in the ruling Liberal Democratic Party that could be interpreted as a defense of Adolf Hitler's motive for genocide during World War Two.  Japan's Aso Retracts Hitler Comment After Criticism,” By REUTERS, The New York Times AUG. 29, 2017, 10:45 P.M. E.D.T. (日本の麻生太郎副首相は、第二次世界大戦中の大虐殺のアドルフ・ヒットラーの意図の擁護と解釈できる、与党自民党の彼の派閥の議員に対する発言を撤回した。)

 

 

次のAP電も、「ヒトラーの意図は良かったと示唆するように見えるコメント」と捉えている。

 

Japan's deputy prime minister on Wednesday retracted a comment made a day earlier that seemed to suggest that Nazi leader Adolf Hitler had good intentions. Taro Aso was speaking at a seminar for his faction in the ruling Liberal Democratic Party on Tuesday when he said: "I don't question a politician's motives; it is delivering results that matter. Hitler, who killed millions of people, was no good, even if his intentions had been good."(“Japanese Official Retracts Remark About Hitler's Intentions,” AUG. 30, 2017, 5:33 A.M. E.D.T.(日本の副首相は水曜日、ナチス指導者アドルフ・ヒットラーの意図は良かったと示唆したように見えた、1日前にコメントを撤回した。麻生太郎は火曜日、与党自民党の彼の派閥のセミナーで話をし、「政治家の動機を私は問題にしない。大事なのはその結果だ。何百万人もの人々を殺したヒットラーは、たとえ、彼の意図が良いものだったとしても、よくない」と述べた。)

 

ロイター電では、麻生財務相は「ヒトラーの意図は正しかったと」と発言してと捉え、直接引用部分は共同通信英文ニュースの英語をほぼそのまま使っており、発言の逐語訳に近い英訳となっている。

 

アメリカのワシントン・ポスト、イギリスのインデペンデント紙は、見出し、記事とものAPが流したものをそのまま使っている。その見出しは、

 

 

 Japanese official retracts remark about Hitler’s intentions (日本の高官、ヒトラーの意図についての発言を撤回する)

 

で、やはり、麻生発言は「ヒトラーの意図」についてであるという捉え方をしたという受け止め方だ。

 

ちなみに、最初に取り上げたガーディアン紙のこの記事の後半部分に麻生氏が今と同じ副総理兼財務相であった13年7月29日の 「ドイツのワイマール憲法もいつの間にかナチス憲法に変わっていた。誰も気が付かなかった。あの手口に学んだらどうかね」という発言をも詳しく報道している。その部分を引用しておく。

 

 

In 2013, he came under pressure to resign after suggesting that Japan should follow the Nazis’ example when considering how to change its constitution.2013年には、彼は、憲法改正の方法を検討にあたっては、日本はナチスの例に従うべきだと示唆し、辞任の圧力にさらされた。)

Criticising the lack of support among older people for revising Japan’s postwar pacifist constitution, Aso said it could learn from how the Nazi party changed Germany’s constitution by stealth before the second world war.日本の戦後平和主義憲法の改正に対する高齢層の支持の欠如を批判し、麻生氏は、第二次世界大戦前にナチス党がドイツ憲法をどのように静かに変えていったたかを(自民党は)学ぶことができる。)

 

Since revising Japan’s constitution could trigger protests, Aso suggested “doing it quietly, just as in one day the Weimar constitution changed to the Nazi constitution without anyone realising it. Why don’t we learn from that sort of tactic?”  Justin McCurry ,Japanese minister Taro Aso praises Hitler, saying he had 'right motives' The Guardian, London, August 30, 2017(憲法改正が抗議行動を起こす可能性があることから、麻生氏は、「静かにやることです。ある日、ワイマール憲法は誰にも気づかれずにナチス憲法に変わった。われわれもあの手の戦術から学んでは」と提案した。)

 

 

このように、ガーディアン紙をはじめここで取り上げた英文報道は麻生氏にナチス賞賛の体質があることを示唆するような書き方となっている。

 

 

(引野剛司・甲南女子大学教授 9/1/2017)

 

 

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